「余命10年」小坂流加 を読んで。

初めての恋愛小説。
今まで一度も恋愛小説を読んだことがなかった。
昭和生まれの変な拘りが遺伝子レベルでそうさせるのか、とりあえず手に取らない日々を送ってきた。
たまたま、この本の広告に出会う。
「余命10年」て、やっぱりインパクトあるタイトルだと思う。でも、同時にドヤ感も感じられた。
さあ、さあ泣かせますよ的なw 実際、広告には「今一番泣ける恋愛小説」とあるし、それに飛びつく
年齢でもないしなぁなんて思いながら、書籍の詳細を眺めているともっと驚くことが書かれていた。

著者自身が文庫本刊行前に亡くなっている。
2007年に単行本が発表され、2017年5月に文庫化されているが、その直前にご本人が亡くなっていると
書かれていた。この小説では主人公が、国の指定難病を患い治療方法がない中「余命10年」の過ごし方が書かれている。おそらくご本人のリアルな声が書かれているにではないのだろうかと感じ、購入した。

死に向かうリアル過ぎる描写。
物語は、「死」と真正面から向き合う場面から始まる。
20代の女性が、本来なら当たり前の様に青春を謳歌し人生の「普通」の幸せや「愚痴」や「悩み」
さえも諦め、ただ「死」へ向かっていく10年間をどうやって生きていくかを選ばなければならない。
しかも、その選択肢は限りなく少ない。自分の事よりも残された家族の事を考える、心優しい主人公は
「恋」も捨てる決意をする。やがて、没頭できる事に出会え、またそこには支え合える友人もできる。
こうして物語は進んで行く。
文庫化され、大きく加筆された部分がある。亡くなる前の病院でのエピソードだ。
単行本の時には、この部分はなかった。つまり文庫化されるまでに著者が体験した事が追加されている。この部分が、とてもリアルに書かれている。僕自身は大きな病気の体験や大けがもした事がない。
だから、絶対に想像すらできない思いが書かれている。

これが本当の赤裸々な言葉。
経験者でなければ、本当の想いはわからない。これは真実だと思う。でも、この小説を読んで数ミリかもしれないが、ほんの少し想像できる自分になれたんじゃないかと感じた。
この加筆された部分がなければ、悲恋物語としてしか読めなかったかもしれない。
また主人公に向けられる「励まし」の言葉が時として、傷つけてしまう場面や親戚たちの裏での会話に
揺さぶられる場面は、本当に考えさせられる。
恋愛小説なんだけど個人的には、こういった人間関係や病気になって主人公が気付いていく一つ一つの描写が胸に迫ってきた。

「映画化、決定!」おめでとうございます!
今年の三月に映画化が決定したようですね。おめでとうございます!
たぶん、だから広告にもヒットしたんだと思う。まだ詳細が発表されていないので内容については
全くわからないですが、きっと素晴らしい作品になってくれるだろうと期待しております。

まとめ。
生まれて初めて恋愛小説を読みましたが、最初の一冊目がこの本で良かったなと思う。
恋する時のトキメキやドキドキを楽しむだけなら、この作品はちょっと、、、いや大分重たいかもしれない。でも恋愛小説をあまり読んでこなかった方や、ちょっと苦手っていう方も一度手に取ってもらえたらと思う一冊。

最後まで読んでいただき、ありがとうございました。


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